エレベーターが設置されている建物には必ず「ピット(昇降路の最下部)」があります。
このピットは構造上、雨水や地下水が入り込みやすく、適切な防水処理を行わないと、機械トラブルや建物の劣化につながる恐れがあります。
この記事では、エレベーターピットの防水工事にかかる費用や選べる工法の種類・特徴、工事が必要な理由や注意点などをわかりやすくまとめました。
エレベーターピットの防水工事費用の相場は80~100万円前後
エレベーターピットの防水工事は、建物の規模や使用する工法、施工環境によって費用が大きく変わります。
一般的なマンションやビルでの防水工事費用は、約80~100万円前後が目安です。
【費用の内訳例】
項目 | 内容・補足 |
---|---|
防水材の材料費 | ウレタン、アスファルト、FRP、塩ビなど |
施工費(人件費) | 職人の作業日数による。1〜2日で終わることも |
下地処理費 | 既存の汚れ除去、ひび割れ補修など |
機材費・養生費 | 搬入機材や、周囲を汚さないための養生費用など |
管理・諸経費 | 工事監督や安全対策費用などを含む |
地下水位が高い地域や、既に漏水が見られる場合は、排水ポンプや乾燥工程が追加され、費用がさらに上がる可能性があります。
規模・工法・状態が費用に与える影響とは?
エレベーターピットの防水費用は、以下の3つの要素によって大きく左右されます。
建物規模が大きいほど費用も上がる理由とは?
例えば、4階建て以上の中層ビルやエレベーターが2基以上ある建物では、ピットの面積や施工範囲が広くなり、その分使用する防水材の量や作業時間も増加します。
また、深いピットほど地下水圧の影響を受けやすく、高性能な防水が求められるため、費用が上がります。
具体例:1階建ての小規模な店舗と、10階建てのマンションでは、同じ工法でも20万円以上の差が出ることもあります。
選ぶ防水工法によって材料費と耐用年数が変わる
防水工法には種類があり、それぞれ耐用年数・施工性・費用感に違いがあります。
工法名 | 特徴・メリット | 耐用年数目安 | コスト感 |
---|---|---|---|
ウレタン防水 | 柔軟性あり。複雑な形状にも対応可能 | 10〜13年 | 中程度 |
アスファルト防水 | 頑丈で耐久性が高いが施工に熱が必要 | 15〜20年 | 高め |
FRP防水 | 強度に優れ、耐薬品性もある | 10〜15年 | やや高め |
塩ビシート防水 | 工場などにも使われる。安定した性能 | 12〜20年 | 中〜高 |
ピット内部が複雑な形状の場合、液状のウレタン防水が柔軟性も高く、施工しやすいため採用されることが多いです。
現地の状態によって追加費用が発生するケースも
防水工事を行う前に「下地の補修」や「排水処理」「結露対策」が必要になるケースでは、想定以上の費用がかかる場合もあります。
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コンクリートのひび割れが激しい場合
補修費用追加 -
水がすでに溜まっている場合
排水作業や乾燥処理が必要 -
結露が頻発するピット
結露防止材の施工が追加される可能性
補足:現地調査の段階で、施工会社に「追加費用の発生条件」をしっかり確認しておくことが大切です。
なぜエレベーターピットに防水工事が必要なのか?
エレベーターピットは、建物の最下部かつ地下に設置されるため、水分が溜まりやすい構造です。
そのため、防水工事を行わずに放置すると、以下のような問題が発生します。
放置すると起こるトラブルとリスク
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エレベーターの機械が故障する
湿気によるショートやサビで故障。修理費は数十万円以上になることも。 -
悪臭やカビが発生する
閉鎖空間のため、臭いが上層階にまで伝わることもあります。 -
建物構造に悪影響
コンクリートの中性化や鉄筋の腐食により、建物の耐久性が落ちる危険も。
特に古いマンションや、地盤が緩い地域では、年数に関係なく防水劣化が起きやすいため、定期点検と早めの対応がカギになります。
防水工事に使われる主な工法とそれぞれの特徴
ウレタン防水|最も多く採用される万能型
液状のウレタンを塗布して防水層を形成する工法です。
複雑な形状にも対応できる柔軟さがあり、重ね塗りでの補修も可能なため、メンテナンス性にも優れています。
おすすめのケース:小規模なピット・狭い場所・凹凸がある箇所が多い現場に向いています。
アスファルト防水|重厚で長持ちする信頼工法
アスファルトを加熱し、防水シートと交互に積層していく工法。
耐久性・耐水性は抜群ですが、臭いが強く火気も使うため、居住中の施工には不向きな場合もあります。
おすすめのケース:大型マンションや商業ビルなど長期耐久性を重視する建物。
シート防水(塩ビ・FRP)|工期短縮&高性能
塩ビやFRPなどの既製のシートを敷き詰めて接着する防水方法。
工期が短く、均一な品質が得られるため、近年人気が高まっています。
FRPは軽量かつ高強度で耐薬品性もあり、特殊な施設でも使われます。
おすすめのケース:清潔性が求められる施設・スピード重視の工事現場。
防水工事のメンテナンスと長持ちさせるコツ
定期点検と排水処理が防水性能を維持するカギ
防水層は時間と共に劣化するため、5年に1度の点検が推奨されています。
点検時には以下の項目をチェックします。
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水が溜まっていないか
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ひび割れ・剥がれはないか
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結露の跡やカビ臭はないか
また、排水ポンプやドレン(排水口)の清掃も合わせて行うことで、内部に水が溜まるリスクを下げることができます。
点検費用は1回あたり1〜3万円程度が相場。長い目で見れば、トラブル防止に非常に効果的です。
まとめ|防水工事は将来的なコスト削減に直結する投資
エレベーターピットの防水工事は、単なる修繕ではなく、安全性・建物寿命・維持費削減に関わる大切な工事です。
目先の費用だけでなく、どの工法が自分の建物に最適か、将来的なメンテナンスコストとのバランスを見て検討するのがポイントです。