エレベーターは建物にとって欠かせない設備ですが、その最下部にある「エレベーターピット」は、水の侵入によるトラブルが多発しやすい重要な場所です。
普段目にすることがないため見落とされがちですが、防水対策を怠ると、エレベーターの故障・異臭・コンクリート劣化・建物全体の老朽化につながる恐れがあります。
この記事では、エレベーターピット防水の必要性・防水工事の方法・タイミング・対策のポイントまで、専門的な内容をわかりやすく解説します。
【エレベーターピットに防水が必要な理由】放置して起きる4つのリスクとは?
エレベーター設備と建物の劣化を防ぐために、ピットの水対策は見えないけれど重要なメンテナンスです
エレベーターピットは建物の最下部にあるため、地下水の上昇や雨水の浸入、結露などで湿気がこもりやすい場所です。
ここに水がたまることで、次のようなリスクが発生します。
主なリスクと影響
リスク内容 | 補足説明 |
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エレベーターの故障 | 制御盤や配線に水がかかるとショートの危険性。最悪の場合、運行停止や交換費用が発生します。 |
異臭の発生 | 湿度によってバクテリアやカビが繁殖し、ピット内から不快な臭いが建物内に広がることも。 |
ピットの老朽化 | 水分によりコンクリートが中性化し、クラック(ひび割れ)が進行。補修には大がかりな工事が必要に。 |
建物全体の劣化 | ピットの劣化は基礎部分に影響を与え、建物構造の寿命を縮める原因にもなります。 |
特にエレベーターは安全性が最優先の設備です。見えない場所での漏水が、重大な事故や故障につながる前に、防水対策を講じる必要があるのです。
【防水工事が必要なサイン】エレベーターピットに水があるかどうかの確認ポイント
点検時に「水溜まりがない」からと安心するのは危険。蒸発痕やひび割れの有無も要チェック
防水工事が必要かどうかを判断する際、単に水がたまっているかどうかだけで判断してはいけません。
次のようなサインがある場合、すでにピット内部に水が浸入している可能性があります。
防水工事が必要な代表的サイン
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ピット底に水がたまっている
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水はないが「蒸発した痕跡」がある(白くなった跡、輪じみなど)
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壁面や床にひび割れがある
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ピット内がカビ臭い、湿気が強い
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昇降機の部品にサビや腐食が見られる
こうした兆候が確認された場合は、早めに専門業者へ調査を依頼し、防水工事を検討しましょう。
【エレベーターピットの防水方法】代表的な防水対策とその特徴・役割
単に「防水材を塗る」だけでは不十分。ひび割れ補修や止水材の選定が安全性を大きく左右します
エレベーターピットの防水工事には、複数の対策方法があり、それぞれの組み合わせが重要です。
以下に代表的な対策と、それぞれの目的をまとめました。
対策方法 | 目的・補足説明 |
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コンクリート打ち継ぎ部への止水板設置 | コンクリートの接合部(継ぎ目)からの水の侵入を防ぐ |
水膨潤性シール材の施工 | 水に反応して膨らむ特殊素材で、すき間を自動で塞ぎ、再侵入を防ぐ |
ひび割れ注入補修(エポキシ樹脂など) | 既存のクラックに樹脂を注入し、内部までしっかりと塞いで補強 |
表面への防水材塗布(塗膜防水) | 防水性のある塗料を複数層に塗布し、雨水や湿気の侵入を防止 |
防水対策のポイント
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水の通り道を見逃さず、徹底的に塞ぐことが重要
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見た目では分かりにくいひび割れにも注入材で対応
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防水材はエレベーターピット専用の耐水性・耐摩耗性の高いものを選ぶこと
一つの工法ではなく、複数の対策を組み合わせることで、より強固な防水が実現できます。
【防水工事のタイミングはいつ?】見逃されがちな“劣化の初期サイン”を見逃さない
水が「溜まってから」では遅い。水の蒸発跡や臭いも初期トラブルのサインと認識を
エレベーターピットの防水工事をいつ行うか――これは**「水がたまってから」では遅い**のが現実です。
適切なタイミングを見極めるためには、次のような状況に注意してください。
工事を検討すべきタイミング例
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定期点検で蒸発したような水の跡が確認された
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数年前に工事したが再び臭い・湿気が気になる
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ピット内のコンクリートが白く粉を吹いている(中性化の初期症状)
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過去に漏水経験がある建物で定期的なメンテナンスを行っていない
防水層の耐用年数は10〜15年が目安です。築年数が経過している建物ほど、予防的な防水工事の検討が推奨されます。
【まとめ】エレベーターピットの防水工事は建物と人の安全を守る「見えないけれど重要な設備投資」
エレベーターは日常的に使う設備ですが、その安全性を支えるピット内の環境整備は見逃されがちです。
しかし、ピットの防水を適切に行わないと、機械故障・異臭・建物全体の劣化といった深刻なトラブルを招く原因になります。
本記事のまとめ
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エレベーターピット防水は、エレベーターの故障や建物劣化を防ぐために必須
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点検時に「水の蒸発跡」「異臭」「ひび割れ」がある場合は要注意
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対策には、止水・補修・専用防水材の塗布などを組み合わせるのが効果的
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防水のタイミングは“症状が出る前”の早期対応が理想的
エレベーターピットの防水工事は目立たないけれど、建物の安心・安全・長寿命を支えるための不可欠な工事です。
点検結果や築年数に応じて、信頼できる業者に相談し、適切な工法を選びましょう。