ポリマーセメント系塗膜防水は、コンクリート構造物における防水工法の中でも、環境性能と施工性を兼ね備えた人気の工法です。屋上やベランダ、地下壁、水槽など、さまざまな場所に対応できる柔軟性と、安全な施工性が魅力です。
この記事では、ポリマーセメント系防水材の特徴やメリット、施工方法、他の防水工法との比較などを、実例を交えながらわかりやすく解説していきます。
ポリマーセメント系塗膜防水とは?構造と素材の基本知識
セメントと樹脂のハイブリッドでできた水性防水材
ポリマーセメント系塗膜防水とは、セメント系パウダーにポリマー(エマルション樹脂)を混ぜた水和凝固型の防水材です。
塗布すると表面に塗膜を形成し、コンクリートなどの下地に密着して水を遮断します。
一般的なウレタンやアスファルト系と違い、有機溶剤を使わないため環境にも優しく、火気不要で安心して使用できます。
特性 | 内容 |
---|---|
材料構成 | セメント系粉体+エマルション(ポリマー) |
固まり方 | 水和反応による自然硬化 |
有機溶剤の使用 | なし(低VOC) |
施工時の火気 | 不使用で安全 |
水性かつ中性の性質を持っており、労働安全衛生法などの規制対象外で、施工現場でも扱いやすい防水材です。
なぜ選ばれる?ポリマーセメント防水の優れた特徴とは
湿った下地でもしっかり密着!天候に左右されにくい施工性
雨上がりや湿度が高い日でも施工が可能なのがポリマーセメント系防水の大きな利点です。通常、乾燥した下地が必要な他の防水工法とは異なり、湿潤状態でも下地との接着力が落ちにくく、急な天候変化にも対応可能です。
具体例:梅雨時期の外壁防水工事や、湿度の高い地下構造物でも施工が進められるため、工期短縮に役立ちます。
複雑な形状でもOK!刷毛塗り・吹き付け・コテ塗りにも対応
ポリマーセメント系は柔軟な施工法が可能です。ハケ・コテ・吹き付けなど、多彩な塗布方法に対応しており、配管まわり・段差・曲面など複雑な形状にも施工可能です。これにより、シームレスで隙間のない仕上がりが実現し、美観も保てます。
補修も部分的に上塗りするだけで対応可能なため、メンテナンスも容易です。
滑らかで強靭な仕上がりが長持ちする理由
この防水材は、塗膜自体に強度と弾性があり、ひび割れしにくい特徴があります。さらに、紫外線や酸性雨にも強く、長期的に防水性能を維持できます。平滑な仕上がりで外観も美しく、公共施設や集合住宅など、美観維持が求められる現場でも採用されています。
耐用年数は約10〜15年が目安。小規模補修を重ねることでさらに長寿命化も可能です。
主な使用シーンと適用部位|屋上から水槽、地下まで幅広く活躍
適用例と選び方をケース別に紹介
ポリマーセメント系防水は、屋上・ベランダ・バルコニーのほか、水槽・地下外壁・ピット内部・外断熱部材の保護層など、さまざまな場所で使用されています。防水と同時に保護仕上げの役割も果たすため、外部にさらされる箇所には最適です。
使用部位 | 特徴・施工メリット |
---|---|
屋上・バルコニー | 紫外線や雨風に強く、メンテナンスもしやすい |
地下外壁 | 湿気が多い環境でも接着力が落ちにくい |
水槽・ピット | 水圧に強く、施工後も高い防水性を保てる |
立ち上がり部 | ハケ塗り・コテ塗りで複雑形状にも密着 |
屋内に使う場合も臭いが少なく、居住者への影響が少ないことから、学校や病院などの施設でも採用が進んでいます。
他の防水工法との違いは?特性を比較して選ぶポイント
防水材別の比較表で違いをわかりやすくチェック
防水工法 | 特徴 | 耐用年数 | コスト感 | 向いている場所 |
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ポリマーセメント系 | 火気不要、水性、安全性・施工性が高い | 約10〜15年 | 中程度 | 屋上・地下・水槽・複雑形状 |
ウレタン防水 | 柔軟性が高くリカバリーしやすい | 約10年 | 中程度 | ベランダ・狭い屋上 |
アスファルト防水 | 高耐久で広面積に最適、熱施工が必要 | 約20年 | 高め | 大型施設・集合住宅屋上 |
FRP防水 | 強度と耐薬品性が高い、硬化後は非常に丈夫 | 約15年 | 高め | バルコニー・厨房など |
ポリマーセメント系は、FRPやアスファルトのように施工条件が厳しくないため、安全でコストを抑えたい現場や、DIYにも検討されるほどの柔軟性があります。
実際の施工方法とメンテナンス方法
塗るだけの簡易施工で安全かつスピーディーに
基本の施工手順は以下の通りです。
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下地処理(清掃・ひび割れ補修など)
下地のホコリや油分を除去し、補修材で不陸を調整します。 -
主材の混合(セメント系パウダー+ポリマー液)
現場で混合して使用することで、フレッシュな状態を確保できます。 -
ハケ・ローラー・吹き付けで塗布
施工部位や形状に応じた方法で2〜3回塗り重ねて厚みを確保します。 -
乾燥養生
夏季で12時間、冬季では24時間以上の乾燥が目安です。
施工後はトップコート不要なケースも多く、メンテナンスも塗り直しのみで対応可能です。
製品例と選定のヒント|代表的な製品で性能を確認しよう
信頼あるメーカー製品から選べば安心!
製品名 | メーカー | 特徴と用途 |
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フローン無機防水 | 東日本塗料 | 高耐久・無機系添加剤配合・屋上や水槽に最適 |
TLコート | 田島ルーフィング | 下地追従性に優れ、立ち上がりや垂直面にも対応 |
製品ごとに硬化時間や適用下地が異なるため、施工業者の指導のもと、現場環境に最適な製品を選定することが大切です。
まとめ
ポリマーセメント系塗膜防水は、環境に配慮しながらも確かな防水性能を実現する優秀な防水工法です。屋上・地下・ベランダなど、さまざまな部位に対応でき、複雑形状にも施工しやすいという特徴があり、施工性・メンテナンス性・安全性の面でも非常にバランスの取れた選択肢です。
防水工事を検討中の方は、ぜひこの工法を候補に入れ、専門業者に相談して最適な製品・施工方法を選ぶことをおすすめします。